ヒフときどきサカナ

もっこす院長が発信するブログ

【ワキ汗対策】保険適用のエクロックゲルとラピフォートワイプについて

キ汗治療薬

夏が近づいて参りました!

ワキの汗染みが気になるシーズンです。

私自身、ワキ汗が多くTシャツなど着る際は汗染みの目立つ色付きは着ることができず、似合わないけど汗染みの目立たない白のTシャツを選ばざるをえない状況です…

 

今回、現在処方可能なワキ汗(原発腋窩多汗症)治療の保険薬剤、エクロックゲルとラピフォートワイプについてご紹介です。

 

いずれも、発汗を促す神経からでる伝達物質が発汗器官に働きかけるのをブロックし、制汗する薬剤です。根治ではなく、抑制治療となるため薬剤使用中のみ効果を発揮します。

 

品外観

まずはエクロックゲル。

ボトルポンプ式でアプリケーターキャップに薬液を乗せ薬液に触れずにワキに塗るタイプのお薬です。

 

次にラピフォートワイプ。

おしぼりタイプの剤型で、携帯に便利です。

 

較表

添付文書上の情報を比較してみましょう。

  ラピフォートワイプ エクロックゲル
有効成分 グリコピロニウムトシル酸塩水和物 ソフピロニウム臭化物
用法用量 1日1回 1日1回
対象年齢 9歳以上 12歳以上
使用方法 ①両脇を清潔で乾いた状態にする
②使う直前に開封する
③広げたワイプ1枚で両脇を一拭きする
④手を洗う
①脇の水気を拭き取る
②ボトルからキャップを外した後、アプリケーターを外す
③ポンプを押してアプリケーターの上面に薬液をのせる
④薬液を脇全体に塗り広げる
⑤残った薬液を丁寧にふき取るか水で洗い流す
薬価・負担額 薬価:262円/1包
2週間分で14枚 14日分:3668円(3割負担:1100円)
薬価:242.6円/g 1押しでソフピロニウム臭化物として約27mg
2週間分で1本(20g) 14日分:4852円(3割負担:1456円)
処方制限 2023年5月23日まで処方制限あり 処方制限なし
有効性
(直接比較しておらず患者背景や評価方法も異なる)
例:HDSSが2段階以上改善とHDSSが1又は2の違い等
①投与開始日と比較した4週後のHDSSが2段階以上改善
かつ両腋窩の平均発汗重量が50%以上改善した患者の割合
1週後から有意な改善が認められ、4週後には本剤群41.1% 基剤群16.4%
②HDSSがベースラインから2段階以上改善した患者の経時推移
20週後まで改善した患者の割合が増加し、28週後には60.5%、52週で64.3%
③平均発汗重量が50%以上改善した患者の割合
2週で92.9%、28週で82.6%、52週で85.3%
①治療終了時のHDSSが1又は2であり、治療終了時の両腋窩合計発汗重量のベースラインとの比が0.5以下の患者の割合
2週後から有意な改善が認められ、6週後にはエクロック群53.9% 基剤群36.4%
②HDSSが1又は2の患者の割合
24週目で切替群87.2%、継続群83.5%、52週目で切替群76.6%、継続群71.4%
③52週目の両腋窩合計発汗重量のベースラインとの比が0.5以下の患者の割合
52週目で切替群66%、継続群67%
安全性 第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験 (手洗いの徹底はしていない)
副作用頻度15.5%(26/168例)散瞳3.6%(6例)、排尿困難3%(5例)、羞明2.4%(4例)、霧視1.8%(3例)、口渇1.8%(3例)、頻尿1.2%(2例)、皮膚炎0.6%(1例)投与中止に至った症例はなく重篤な副作用はなかった
長期投与試験(手洗いの徹底はしていない)
副作用頻度20.8%(38例/183例)羞明および口渇3.8%(7例)、散瞳・霧視・接触皮膚炎2.7%(5例)、排尿困難2.2%(4例)、頻尿1.1%(2例)
投与中止に至った副作用:接触皮膚炎2例・排尿困難・口渇・湿疹各1例
重篤な副作用はなかった
第Ⅲ相試験
副作用頻度16.3%(23/141例)適用部位皮膚炎6,4%(9例)、適用部位紅斑5.7%(8例)、適用部位そう痒2.1%(3例)、散瞳0.7%(1例)、汗疹0.7%(1例)、口渇1.4%(2例)適用部位湿疹1.4%(2例)、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加0.7%(1例)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加0.7%(1例)、γ-グルタミルトランスフェラーゼ増加0.7%(1例)、好酸球百分率増加0.7%(1例)
長期投与試験
副作用頻度(継続群)45.1%(41/91例)適用部位皮膚炎29.75(27例)
適用部位湿疹7.7%(7例)、適用部位紅斑5.5%(5例)、適用部位疼痛1.1%(1例)、適用部位そう痒3.3%(3例)、適用部位乾燥1.1%(1例)適用部位毛包炎1.1%(1例)、散瞳2.2%(2例)、霧視1.1%(1例)、口内乾燥、ざ瘡1.1%(1例)、湿疹1%(1例)、汗疹1%(1例)、排尿困難1.1%(1例)、血中クレアチニン増加1.1%(1例)、血中乳酸脱水素酸素増加1.1%(1例)。投与中止理由となった副作用は適用部位湿疹2例、散瞳1例、霧視1例。
副作用頻度(切替群)39.4%(37/94例)適用部位皮膚炎25.5%(24例)、適用部位湿疹6.4%(6例)、適用部位紅斑6.4%(6例)、適用部位刺激感2.1%(2例)適用部位疼痛1.1%(1例)、適用部位そう痒3.2%(3例)、適用部位乾燥2.1%(2例)、適用部位丘疹1.1%(1例)、適用部位ざ瘡1.1%(1例)、高尿酸血症1.1%(1例)、散瞳1.1%(1例)、皮膚乾燥1.1%(1例)、皮膚色素脱失1.1%(1例)、皮膚線条1.1%(1例)、排尿困難1.1%(1例)、代償性発汗1.1%(1例)。投与中止理由となった副作用は散瞳1例、適用部位皮膚炎1例。

 

直接比較されたデータはないため、上記表からは製品の優劣は付け難いですが…

 

エクロックゲルの優位点としては、先行発売されたため新薬の処方規制(1処方2週間までの制限)が解除されていることと、アプリケーターを使って塗り、薬液を手に触れずに使用できるため、副作用のリスクが少ないということでしょうか。

 

ラピフォートゲルにおいては、9歳(エクロックゲルは12歳)から使え、1回使い切りで衛生的かつ皮膚炎などの投与部位副作用も少なく、投与後1週間で有意差のある即効性が期待できます。また、薬価もエクロックゲルと比較し安いです。しかし、新薬であり1処方2週間までしか処方できません。

 

以上を踏まえたうえで、薬剤の選択が必要となります。

ワキ汗で悩んでいる方は是非とも相談してくださいね!